(一)この世界ごと愛したい






「ここまでの接近に、あなたが気付かないとは余程深刻なお悩みですか?」



「っ!!!」




天候に意識を向けすぎていた私は、背後から迫り来ていた人物に気付けず。



完全に間合いまで入られてしまった。






「エリク、様。」




気付いた時にはもう遅い。


間合いに入られてる上に、剣も忘れてきた。




私を屋上の壁に押し当て、ここぞとばかりに急接近するエリク。




「…何か、御用ですか?」


「愛しい姫には、用がなくても会いたいものなんだよ。」


「…御用がないなら私は失礼します。」




私は壁とエリクに挟まれたこの状況を打破すべく、抜け出そうと試みる。



…が。


エリクが両手で私の左右の進路を阻む。





「この好機を、私が逃すとでも?」


「何が好機か分かりませんし、是非とも逃していただきたいです。」




エリクはただただ笑っているだけ。





「戦の準備は整いましたか?」


「そうですね。後は最終調整くらいかと。」


「随分出陣の日を決めあぐねていたように見えますが?」


「問題ありません。私から陛下へお伝えいたします。」