(一)この世界ごと愛したい




何!?じゃあこのまま聞くの!?




「確かにレンに姫は勿体ない。私なら、姫を誰の目にも触れぬよう包み隠し私だけの姫にする。」


「兄上にこんなに想ってもらい、姫は幸せですね。」




それのどこが幸せなのか教えて下さい。


最早どこからつっこめばいいのかも分からんよ。





「姫、そろそろ戻る?」



おーい。


レンさん、言われっぱなしでいいのかい!?




私はイライラしてますけど!?




「…はい。」



とりあえず返事をして席を立とうとしたんだけど、阿呆な王子二人は尚も続ける。





「姫も気の毒に。こんな負け犬に嫁がされて。」


「問題ないよ。そんな姫を私がこれから救い出す。今だけの幸せを噛み締めておけよ、レン。」




まだ黙ってるつもりかと、私はレンをチラッと見る。



レンは悲しそうでも怒っているわけでもなく。それが当たり前かのように静かに聞いている。




…これが、レンの日常なのか。









「……お言葉ですが。」



立ち上がり声を上げた私を、ギョッとして見上げるレン。




レンが何も言わないので私が言います!!!







「私はレン様ほど優しく聡明な方を知りません。陛下が指名されなくとも、私は迷いなくレン様を選びます。侮辱するのは金輪際お止めください。不愉快です。」