(一)この世界ごと愛したい




顔を赤らめてそう言ってくれたレン。



…見苦しくはないっぽくてよかったです。




「ここを乗り越えれば終わるんだし!よし!頑張るぞー!」


「君は頑張らなくていいから。」




そう言いながら、会場である広間に到着しました。


この広間には良い思い出は一つもない。



けど、どうか今日だけは何事もなく無事に終わりますように!!!





そう祈りながら、相変わらず荘厳な扉を開けて中に入りました。




「…おお、姫。そなたは何を着ても美しいな。」


「陛下、ごきげんよう。皆様、お待たせして申し訳ございません。」


「気にするな。まだ時間も少し早い。」



間に合ってたんだ!よかったー!



セザール王と、その隣に座る王妃。


そしてエリク。



けどスーザン夫婦はまだのようで、ビリではなくてとりあえず安心しました。




「……。」


「……。」



何も言っては来ないけど、流石に気付く。


エリクの阿呆が、私を舐め回すようにジーッと見つめている。




目を合わせちゃだめだ。口も聞いちゃだめだ。


あまりの気持ち悪さに身震いする私。





「…はぁ。」



一息吐いたレンもエリクの様子に気付いたようで。


そっと私の背後に回り、自分のジャケットを私に掛けてくれた。




「ありがとう、ございます。」


「まだ寒いからね。」




そう言って、二人で苦笑いした。