(一)この世界ごと愛したい




エリクは足を止め、ゆっくり振り返り私を見る。




「どういう意味かな?」


「陛下が私を外へ出すことも、私が城を見に行くことも、想定外だったのではないかと思っただけです。」


「ふふ、確かにそうだね。」








「あなたはあの城を、私に見られたくなかったのではありませんか?」




すると、エリクは声高々笑い。


またあの不気味な笑みを浮かべた顔で、私に言葉を投げ掛ける。





「結論、問題はない。姫を手に入れるためには、多少の犠牲はやむを得ないよ。」





あの城の完成度の高さ。


守りの硬さ。


そして、立ち込める罠の匂い。




エリクはディオンと内通しているんだろう。


つまり、セザールの王子であるエリクが敵国ディオンと手を結んでいる。




もちろん、王も知らない水面下で。



それが多少の犠牲か、多大な被害となるかは私次第。







「では姫よ、武運を祈る。」



そう言ってエリクは去って行った。