(一)この世界ごと愛したい




今、おそらく私は思考を探られている。



あの城を見て何を思ったか。


どう戦を展開しようとしているか。





「…正直、城は見事でした。まだ攻め方を決めあぐねるほどです。」


「そうか。姫に落とせぬ城もあるものなのか。」





「落とせないとは言っておりません。」




私はエリクへはっきり伝える。



落とせないことはない。


問題は落とし方だ。





「流石ですね。どう攻略するのか、その至高の考えを伺いたいものだ。」


「まだ思案中でございます。開戦まで楽しみにしていてください。」


「姫は手厳しいな。」




そう言ってエリクは私の手を取り、その手に自分の唇を押し当てる。



…うげー。




「姫の描く戦が、今から楽しみだよ。」




私はすぐにパッと手を収める。


するとエリクは用が済んだのか踵を返す。




その去り行く背中に、私は一つの仕掛けを施す。



ここからは私も反撃に転じたいところ。大いに揺さぶりをかけたいと思っている。









「エリク様、あなたは一つ。






…大きく道を、踏み外したのでは?」