(一)この世界ごと愛したい






「今すぐ兵をお引きください。」


「ああ、そうしよう。」


「王の亡き骸も渡すわけには参りません。」


「ほう、この私に追加で交渉か。一興だな。」


「この戦は和睦という形で終戦してください。」


「亡き骸はいらん。姫さえ手に入れば、戦果もまたどうでも良い。」



セザール王は、王妃の要求を次々に是として流す。



国としての交渉であるのなら、これ以上望むことはないだろう。






ここで、母としての願いが溢れる。





「先程仰っておられました…婚姻についてですが、お相手は…?」


「ああ、三男が未婚なのでな。」


「…娘は、幼少から秀でた戦の才がありました。なので、妻としての振る舞いや教養など、通常の女性が歩む道は知りません。」


「……。」


「粗相もあるでしょうが、どうか大らかな目で見守ってください。決して傷つけることなどないようお願いいたします。娘は自由気ままに生きることを好みますので、出来る限り行動の自由をお与えください。」



突然、愛する夫を失い。


更に、愛する娘を失う母の心境。




心からの母の切願に、その場にいる自国の兵は涙を流し膝から崩れ落ちて行く。





命懸けで国と娘を守ろうと戦った亡き王を、敗戦の王にさせることもせず。



見事、国を守るために身を切る決断をした王妃を責めることなど…誰にも出来はしない。









こうしてアレンデールは、この戦いで偉大なる王と、戦神と呼ばれる姫を失うことになった。