王妃は、静かに涙を流し葛藤する。



自国の民を守るためには、愛する娘を渡さなくてはならない。


愛する娘を守るためには、自国の民の命が消えていく。





「貴様は民を軽んじる、歴史に名を刻む愚かな王妃だな。」




セザール王は笑みを浮かべ、王妃を罵倒する。




「私にとっては…いいえ。この国にとって、あの子は希望なのです。」


「では交渉の幅を広げよう。戦利品として貰い受けるのは辞め、婚姻としての契りを交わそう。」


「…無意味なことを考えるのね。」


「安心しろ。私ではなく我が息子との婚姻だ。」


「なにが違うのか理解でき兼ねます!」


「確かに、我が国に迎え入れる意味では同義だが。家族になるのだから丁重に迎えよう。」





王妃は呆れて溜め息を漏らす。


結局この男の側に娘を近付けることに変わらない。娘が危険に晒されることに変わりはないのだ。