(一)この世界ごと愛したい





少し驚いた。



そんなことには無縁そうなレンなのに、それほど私の殺気がダダ漏れだったのか。





「…もう大丈夫だよ。」



「ルイは大丈夫?」



「うん。るうは私より何倍も強いから。」





弱いのは…。



いつまでもハルに縋って、悲しみの中に取り残されているのは…私だ。





エリクからハルの話を聞いただけ。



エリクは嘘なんて言ってない。事実だったんだけど。






自分でもまだ、折り合いを付けきれないあの戦の話で、自分の不甲斐なさを再認識させられたように思えて。





だって、ハルを思うだけで。


私の心はまだこんなにも痛いから。








「…君は、一人にしてほしいって思ってるんだろうけど。」



「え?」





レンが私の顔に手を伸ばす。





「君の涙を拭うくらいは、許してくれるかな。」






自分が泣いてることにも、私は気付いてなかった。