「ところで姫、兄上はお元気ですか?」
こいつの口から兄という言葉を聞くだけで、こんなにも心が揺れるとは思わなかった。
…静かに流れる風すら、今は鋭く感じる。
「私とのあの戦以来、兄上は戦場には足を運ばれてないですよね?」
やめて。
「しかし兄上は本当に立派な方だ。あなたという存在を守りきったんですから。」
ドクドクと心臓が大きな音を鳴らす。
悔しさや悲しさが滲む。
「あなたを守って倒れ、剣を置けるなら彼も本望だったでしょうね。」
…ハルの本望?
その言葉を聞いて、完全に頭に血が上った私は剣に手を掛けた。

