中庭に向かうと、目的地に人影を発見。
それが誰だか分かったので、私は気付かれる前に方向転換しようと考えた。
「おや、逃げなくてもいいでしょう?」
「……。(ああ、最悪だ。)」
なんでエリクがこんなところにいるんだろう。
「ごきげんよう…。」
「今日はいい天気なので散歩に来たんですが、まさか姫に会えるとは私は運がいい。」
「恐縮です。」
「姫はお一人でどうされました?」
これからここに来る、るうとレンを待ってることを伝える。
それを聞いたエリクが、ニヤリと笑ったことに私は気付くことが出来なかった。
「もうお身体は大丈夫ですか?」
「ええ、お陰様で。」
「それは何より。お父上が亡くなり、愛する国を離れ心を病まれる気持ちも分かります。しかしどうかご自愛ください。」
ここで、亡き父の話をするエリクに思わず怒りの色を見せてしまう私。
一体誰のせいでこんなことになってると思ってるんだと声には出さないが、心の中で考えてしまう。
「…お心遣い、感謝いたします。」
ここで、私は視界にるうとレンを捉える。
もう一刻もここを離れたいと思った私は、少しだけ安堵する。
しかし、エリクはさらに私の心を蝕んでいく。

