(一)この世界ごと愛したい




「あなたは何も悪くないわ。」


「っ…。」



アルを抱き直し、私をそっと抱きしめてくれた。




「私こそ、無力な母で…ごめんね。」


「そんなことない!ママはなんにも悪くない!」


「いいえ。違うの。私は…っ…。」




息を詰まらせ、涙するママ。



何を、そんなに思い詰めているの…?




何かがあったことは、一目瞭然だった。





「ママ…?」


「…この国は負けたの。そしてあの人は殺されてしまった。」




目に涙をたくさん溜めて、ママは私に何が起こったのかをゆっくり話してくれた。




それは、あまりにも非道で狡猾な、セザール王という人物を語るに足る真実だった。