(一)この世界ごと愛したい





ああ。




この国は、どうなってしまうんだろう。





指針を失い、大海原へ放り出されたような感覚だ。






「誰が…っ。」



「セザール王です。」





私は強く拳を握りしめる。



絶対に許さない。




感じた事のないほどの怒りが、私の心を蝕む。同時に沸々と熱いものが沸き立つ。







「……リン…?」




そんな私の荒ぶる感情を宥めるように、執務室の奥から声が聞こえた。




「っ!!」




奥から姿を現したのは、ぐったりしているアルを抱えたママだった。




「い、きてる…ママ…。」


「リン…。」




ようやくここで、私の目から涙が溢れた。



ママも怪我してるのか、服の上から血が滲んでいて。アルはぐったりしてはいるものの、眠っているのだと気付いて安堵した。



燃え上がろうとしていた怒りが、悲しみに変わる。






「リン、よかった…。無事で…。」


「ごめんっ…私がもっと早く…帰れたら…。そもそも、行くべきじゃなかった…っ。」


「…自分を責めないで、リン。あなたが無事で、本当に安心したの。」


「私が、悪いの…。」