ああ。
この国は、どうなってしまうんだろう。
指針を失い、大海原へ放り出されたような感覚だ。
「誰が…っ。」
「セザール王です。」
私は強く拳を握りしめる。
絶対に許さない。
感じた事のないほどの怒りが、私の心を蝕む。同時に沸々と熱いものが沸き立つ。
「……リン…?」
そんな私の荒ぶる感情を宥めるように、執務室の奥から声が聞こえた。
「っ!!」
奥から姿を現したのは、ぐったりしているアルを抱えたママだった。
「い、きてる…ママ…。」
「リン…。」
ようやくここで、私の目から涙が溢れた。
ママも怪我してるのか、服の上から血が滲んでいて。アルはぐったりしてはいるものの、眠っているのだと気付いて安堵した。
燃え上がろうとしていた怒りが、悲しみに変わる。
「リン、よかった…。無事で…。」
「ごめんっ…私がもっと早く…帰れたら…。そもそも、行くべきじゃなかった…っ。」
「…自分を責めないで、リン。あなたが無事で、本当に安心したの。」
「私が、悪いの…。」

