(一)この世界ごと愛したい





城は、感じたこともない負のオーラを纏っている気がした。



足がすくむ。


手が震える。





「……。」



中へ入ると血の匂いが充満していて、横たわる動かない多くの人間。


胸が痛い。




必死で戦ってくれたんだね。






広間へ自然と足が向かっていた。




部屋の前で気付いた。





…明かりが、ついてる。







誰か、いる。









「ひっ…姫様っ!!!」




明かりがついている広間へ入ると、非日常的な光景が広がっていた。




負傷しつつも、たくましい屈強な自国の兵たちが集められていた。



しかし…その目に、どこか影がある。






「姫様だ!姫様が戻ってきた!!!」



「姫様よくご無事でっ…!」




たくさん声をかけてくれる兵たち。



ここにも敵軍の姿はない。






「よかっ…た…。無事な人も、いたんだね…。」




思わず心から言葉が溢れた。






「姫様。」




私に声をかけたのは、父の側近。




「…戦況の、報告をいたします。」






わかってるよ。



だって、ここに生き残った者たちの顔に悲しいって書いてある。














「国王陛下が、討死されました…。」