(一)この世界ごと愛したい





「ま、負けた…のか…。」



落胆して膝から崩れ落ちる伝者。




「…ごめん、辛いよね。もう少しだけ堪えて。生き残った人がいないか探してくれる?できたらさっき言った通り一箇所に集まってて?」





私は、行かなきゃ。



城へ。



家族が、待ってる。





パパ。



ママ。



アル。






お願いだから無事でいて。



こんなの、私一人ではどうしようもないよ。






本当は怖い。行きたくない。



見たくないものなんて、意地でも見たくない。




だけど、家族を思い浮かべると同時に脳裏によぎる地下室。







「…行かなきゃ。」





もう残党もいない。



軍が通ったせいで荒れた街並みを抜けて、私の知る最短の道をただただ進む。