(一)この世界ごと愛したい





城を肉眼で捉えた。



火の手があがっているのか、黒煙もうっすらではあるが見える。




想像はもちろんしていた。




…していたが。


いざ目の当たりにすると全身の血が沸る思いだった。





「姫様、隠し通路から入ります!」


「うん。中に入ったら分かれよう。」




この光景。絶対に忘れない。





「…っ!」




中に入ってまず感じたのは、静寂。



自軍を始め、敵軍の姿もない。









もう、手遅れ…なの……?