(一)この世界ごと愛したい





私は武将であると同時に、軍略にも精通している自負がある。


戦の前には必ず、大まかでも死者数、負傷者数まで計算してから進軍する。




だからこそ、疑問に思えてしまった。



素直に受け止めれば、国を奪われまいと全員が持てる力以上を出しているとも取れる。




恐ろしいのは、そこにも敵の思惑があったとしたらと想像するだけで冷や汗が出る。






「大体の戦況は理解したよ。ありがとう。悪いけど王都に入ったら、少しでも安全地帯を生み出して拠点を作ってみて。それだけで安心できる人もいると思うから。」


「御意!」




簡単なことではないけど、まずは民の拠り所を作ってあげたい。



そして守るべき対象は、いざという時にできるだけ一箇所に固まっていてくれた方が守りやすい。







「…はぁ。」





誰だよ。


戦神アテナって。



私が本当に戦神の化身なら、こんなことは起こらないのに。