(一)この世界ごと愛したい




事情を聞くと、どうやらここに来る途中にエリクに遭遇したそうで。



いつもの饒舌な口で、文句やら嫌味、妬みをダラダラ喋られたそうだ。


それは確かに同情する。本当にいつもいつも話長いもんね。



レンは散々罵倒され、るうはひたすら私のところへ連れて行けと迫られ。二人は疲弊していた。





「…大丈夫?」


「ああ。最終的には言うだけ言って満足したのか、自分の部屋に戻って行った。」


「るうよく耐えたね。」


「疲れはするけどな。」




剣を抜かずになんとかなっただけ、るうにしては及第点だ。




「レン様も平気?」


「俺はいつものことだから。」




二人とも耐え抜いたものの、それはそれは疲れただろうな。


それにしても私は会わなくて済んでラッキーだ。




エリクは、セザール王の血を色濃く受け継いでいるような人で。


その残虐性、狡猾さは親子揃ってひどいものだ。




その上、エリクには加えて計画を練り上げる緻密さを備えている。






だからこの数日後。時間を掛けて練られたエリクの非情な策に、私はまんまと絡め取られることになる。