書庫に向かうが、るうからくれぐれも書庫にいる間も気を抜くなと言われているので、書庫内に誰もいないことを確認してから私はほっと一息吐く。
「誰もいないね…。」
「ここには基本誰も来ないよ。」
「そうなの?」
「だから君とここで会った時は刺客の類かと思って身を隠してたんだ。」
そうだったんだ。
それなのに私に本が落ちてきた時に思わず出てきて助けちゃったのね。
「ほんと大変そうだねー。自分の家にいるだけなのに気が抜けないなんて。疲れそう。」
「家だとは思ってないかな。俺が本来暮らしていたのは別の場所だし。ここへ来たのは一緒に住んでいた母が死んでからなんだ。」
「…あー、なんかごめん。」
「全然大丈夫だよ。」
変な空気になったので、私はひたすら返却する本をひたすら片付けることにした。
そして、また持って帰る本を吟味する。
この辺りの史記は読んでおきたい。
あ、気候について書かれてる本もある。
雨が降らない土地?そんなのあるの?
なんて一人で考えながらあらゆる本を物色していると、第三王子が声を掛ける。
「イグアート地方だね。ここ何年も干魃に耐え忍んでいる場所。」
「何年も雨が降らないなんて、本当なの?」
「本当だよ。作物も育たないし、生活水の確保も困窮してる。」
「雨が降らない土地…か。」
この世界には、私の知らないことがまだまだこんなにも溢れている。
天候について特化して調べたりしたこともあったが、それもほんの一部だったんだ。
「君の興味は幅が広いね。」
「…アレンデールでは、戦場に行く時しか城から出ることが出来なかったからねー。」
「意外。君はそんなことに捉われず自由に駆け回っていそうな感じがしたよ。」
「過保護なパパでねー。私が外に出ると軍をあげて追い回されるから諦めたの。」

