(一)この世界ごと愛したい




何かって何だ。


というか、これって妹に渡すものだっけ?



普通は奥さんとか自分の子供とか、大切な人に渡して贅沢させるための物だと私は勝手に思っていた。




「私はいいって!お金に困ったらるうに頼むし!ハルがいつか大切な人ができた時に渡してあげて!」


「じゃあやっぱお前が持ってろ。」


「なんでそうなるの!?」


「過去にも未来にも、お前以上に大切なもんに俺は出会えない。」




な…。


なんでそんなことを言うんだ。


兄妹じゃなければそれはきっと、これ以上ない愛の台詞のようなことをサラッと言って退けたハル。





「幸か不幸か、お前の顔はあんま知られてねえし。わざわざ俺に楯突こうとする奴はこの国にはいねえ。」


「そうかもしれないけど。」


「他国でも多少の脅しにはなる。お前に手を出せば俺が黙ってねえって証だ。大人しくぶら下げとけ。」


「…私そんな脅しがいるほど弱そうに見える?」




ハルは大きな溜め息を吐く。





「やっぱ、そこまで深い意味までは知らねえか。」


「贅沢三昧の証でしょ?」




私の認識はその程度。


他にも、何か意味があるのか?





「…ま、いいか。」


「よくないよくない!教えてよー!」


「とりあえずお前の顔知ってる奴とか、俺の名にも動じない命知らずには効かねえから気を付けろ。」


「えー、気になるなー。」




るうも何も言わない。


言わないけど、この将印を見た時に少し驚いていたから。よっぽど重大な意味があるのだろうか。





「一応城出るまで隠しとけよ。」


「…もうなんか急に怖い物に思えてきたんだけど。」


「馬鹿。光栄に思え。」




光栄に…ねえ。


私はこの将印の付いた首飾りを、とりあえず明日持っていく荷物の中にしまった。