(一)この世界ごと愛したい





『ねえ、この前話したイグアート地方の話覚える?』


『雨が降らないって言ってた場所だよね。』


『そう。君とそこに行けば、何か解決策が見つかったりするのかな?』




そこへ行きたいと思ったのは、単純な好奇心と。


ほんの少しの正義感。





「雨を呼べるようになってみたい。」


「お前マジで何目指してんだよ。」


「…正義のヒーローとか?」


「やめとけ。不幸なんてその辺に溢れてんだからキリねえぞ。」




私だって全部救えるなんて思ってない。


逆に救えないものの方が、きっと多い。




「でも、理論上は可能なはずなんだよ。私は天候を読み取る時大体、気圧と湿度に注意する。海や川があって、あとは私が条件に適って気圧さえ下げれば…って。ハル、興味ないなら口出さないでよー。」


「何言ってるかさっぱり分からん。」


「…天候って面白いのにー。」


「俺が言いたいのは、あんまり深入りはするなってことだ。ずっとそこに居てやれるわけじゃねえんだろ。変に期待させる方が酷な時もある。」




それも、そうだけど。


ハルが正しいことは分かるけど。





「…鬼め。」


「お前のために言ってんだよ。」


「だろうね。」


「…分かってんなら、俺のいねえとこで傷付いてくれるなよ。」




助けたいと思ったものが助けられなくて。


守りたいと思ったものが守れなくて。



そう言った時、大体私は酷く落ち込む。そのことを誰よりも知っているハルが、そうならないように心配してくれているのはちゃんと理解してる。





ハルって本当に可愛くない。


そしてどこまでも私第一のその思考が最早心配だ。たまには自分のことを心配してほしいものだ。