(一)この世界ごと愛したい





国境がまるで炎の壁となるように、燃え上がる。


何人の人が死んだのか。人の肉が燃える匂いに思わず顔が歪む。





「…使わせないでほしかった…なんて言ってる場合じゃないか。」




私はとりあえず再び地に降り、残った軍と向き合う。


あまりの惨劇に、戦意喪失しているのは分かるんだけど。そこで立ち止まらずに早く撤退してくれ。私も早く帰りたい。







「…大丈夫ですか?」



後軍から、騎馬が一騎前に出る。


狼を匂わせる銀髪の髪が、ゆらゆら揺れている。



季節的には夏だというのに、どこか雪景色を連想させるような涼しげな出立。





…私の嫌いな人。






「…ご心配どーも。」


「いえ。」


「……。」



そう言えば口数少ない人だったな、シオン将軍。




「生まれ持った力ですか?」


「あーまあ。」


「…大人しく着いて来てはくれませんよね?」



そりゃそうだろう。


人をレンタルしようとしてる人のところになんて、死んでも行きたくないです。




「シオン将軍もこんな力に興味が沸いたりするんだねー。」


「貴女には元々目を付けていた。」


「世界で指折りの将軍の目に止まってたなんて光栄だなー。」


「それがセザールに易々と奪われ驚いた。」



易々って…。


何かすみませんね。期待を裏切ったようで。




「どうせ力の見物でしょ?そろそろ退いてくれないかな?私お腹すいたんだけど?」


「相変わらず放漫な人だ。」


「相変わらずって言われるほど知った仲ではないですよー。」


「…もう少し余力ありそうですね?」



えー…。


鬼かコイツ!!!





「これ以上やると加減が効かない。別に無作為に殺したいわけじゃないから、さっさと退いてほしいなー。」


「……。」


「ダメかなー?」


「…その瞳。」



あー色替わりのね。


これも確かに珍しいよね。





「もう少し近くで見てもいいですか?」


「…はい?」



今現状、お互いの間合いに入らぬよう。


それはそれは警戒した位置で話しています。



そして了承したつもりはないのに、既に下馬しているシオン将軍。





「いやいやいや、流石に怖くない?」


「怖い?」


「お互いね?敵同士だしね?」


「…じゃあ、これでいいですか?」



シオン将軍は自身の剣を地面に置く。




「シオン将軍は怖くないの?私は丸腰になったところで燃やせるから意味ないよ?」


「問題ない。」


「問題あるでしょ。」





「貴女は、人を無闇に傷付けはしない。」