国境がまるで炎の壁となるように、燃え上がる。
何人の人が死んだのか。人の肉が燃える匂いに思わず顔が歪む。
「…使わせないでほしかった…なんて言ってる場合じゃないか。」
私はとりあえず再び地に降り、残った軍と向き合う。
あまりの惨劇に、戦意喪失しているのは分かるんだけど。そこで立ち止まらずに早く撤退してくれ。私も早く帰りたい。
「…大丈夫ですか?」
後軍から、騎馬が一騎前に出る。
狼を匂わせる銀髪の髪が、ゆらゆら揺れている。
季節的には夏だというのに、どこか雪景色を連想させるような涼しげな出立。
…私の嫌いな人。
「…ご心配どーも。」
「いえ。」
「……。」
そう言えば口数少ない人だったな、シオン将軍。
「生まれ持った力ですか?」
「あーまあ。」
「…大人しく着いて来てはくれませんよね?」
そりゃそうだろう。
人をレンタルしようとしてる人のところになんて、死んでも行きたくないです。
「シオン将軍もこんな力に興味が沸いたりするんだねー。」
「貴女には元々目を付けていた。」
「世界で指折りの将軍の目に止まってたなんて光栄だなー。」
「それがセザールに易々と奪われ驚いた。」
易々って…。
何かすみませんね。期待を裏切ったようで。
「どうせ力の見物でしょ?そろそろ退いてくれないかな?私お腹すいたんだけど?」
「相変わらず放漫な人だ。」
「相変わらずって言われるほど知った仲ではないですよー。」
「…もう少し余力ありそうですね?」
えー…。
鬼かコイツ!!!
「これ以上やると加減が効かない。別に無作為に殺したいわけじゃないから、さっさと退いてほしいなー。」
「……。」
「ダメかなー?」
「…その瞳。」
あー色替わりのね。
これも確かに珍しいよね。
「もう少し近くで見てもいいですか?」
「…はい?」
今現状、お互いの間合いに入らぬよう。
それはそれは警戒した位置で話しています。
そして了承したつもりはないのに、既に下馬しているシオン将軍。
「いやいやいや、流石に怖くない?」
「怖い?」
「お互いね?敵同士だしね?」
「…じゃあ、これでいいですか?」
シオン将軍は自身の剣を地面に置く。
「シオン将軍は怖くないの?私は丸腰になったところで燃やせるから意味ないよ?」
「問題ない。」
「問題あるでしょ。」
「貴女は、人を無闇に傷付けはしない。」

