(一)この世界ごと愛したい




東の攻防戦は思いの外、時間がかかっている。


それはやっぱり人数が多いから。


あとはそれぞれの国の私への思いが強すぎます。この力が欲しくて欲しくて堪らないと、怨念にも似ている感情が溢れかえっています。



そして、たぶん敵将にとんでもないのがいる。


絶対にバラバラに動くと私が読み違えた。しっかりした連携は取れていないけど、要所要所での判断が的確すぎる。






「そんなに求められても困っちゃうなー。」


「大人しく我が国に降れ!!!」


「えー連合軍でしょ。独り占めはだめだよ。どういう条件で共闘してるのー。」


「期間を定め順番にその力を利用する!!!」




うわ、悪趣味ー。


人を勝手にレンタルしないで下さいー。



てかよくそんな事が本気で成り立つと思ったね。一つ目の国が総取りするに決まってんじゃん。




「…総大将は、恐らく後方で傍観してるエゼルタかな?」


「そうだ。強国エゼルタのシオン将軍が指揮を取るこの軍はお前一人に決して負けぬ!!!」




あのエゼルタの、あのシオン将軍か。


その将軍の名を聞いて、私はここで初めて焦り冷や汗をかく。




大将戦ではなかったけど、一将として戦ったことはある。



…あの頭の良い人が、何故こんな阿呆みたいな進軍をして来たのか。




それはたぶん、私の力の品定めだろう。





「と言うことはエゼルタは傍観だけってことねー。」


「何を言うか!これはシオン将軍の作戦だ!我々が先陣を担い疲弊した貴様をエゼルタが捕える!!!」


「ふーん。ご丁寧に教えてくれてありがとうー。」




私は未だ中央で炎の剣を振る。



正直、もう疲弊しています。


瞳の色を変えているから、向上した身体能力でなんとかまだ一人もここを抜かせていないだけで。




もう疲れた!!!





「晩ごはんまでに帰らなきゃ…。」




もう、仕方ない。


侵略しようとするのが悪い。大惨事になるけど、もう許してください。




私は一度国境まで下がる。


そして左右に展開させたままだった炎を取り除く。




遮るものがなくなったため、敵軍は一気に攻め上げてくる。


私は一度上空へ避難して、軍が国境を越えるその時。火薬に引火させるべく炎を放つ。