(一)この世界ごと愛したい





悲しむ間もない私は、南の国境へ降り立つ。


自分で仕掛けた事とは言え、やはり憤る感情はあるため、ここでその憤りを爆発させるが如く。



私は己が炎を惜しむ事なく、南の軍一万に対して放つ。





「これがアレンデールの寵姫の魔法か!!!」


「くっ…進めん!!!」



寵姫だなんて、いつの話かと自嘲する。





「化け物め…!!!」



そうだね。


そう見えても仕方ない。



今の私はさぞ怖い顔をしているんだろう。





「これ以上進めば全滅します!!!」


「な…。これ程までに馬鹿げた力とは…。」



どうせ退くなら早くしてくれ。


私にはまだ東の連合軍を追い払う仕事が残っている。



どちらかと言えば本命は東。こんなところで体力をあまり使いたくはない。






「くっ…。撤退だ!!!」



一万の軍は初めから炎に臆したことが功を奏して、ほとんど無傷にも関わらず全軍撤退。


これは私にとって、有り難いことだった。





南の軍の背を見送り、また直ぐに東の国境へ向かう。




東の国境には火薬の罠を張ってもらっているので、少しは楽をさせてもらえると嬉しい。


さすがにこれだけ力を使うと消耗する。




「きっついなー…。」



体力的にも、精神的にも。


精神的なものは、やはりさっきのパルマの街の影響を引き摺っているのは明らか。



しかし泣き言を言っても仕方ないので。




私は迫り来る東の三国連合軍を前に、あまり殺させないでほしいと願いながら再び地に降りる。