長く、長い時間に感じる。
どれくらいこんなことを続けているのか、体感ではもう判断は出来ない。
だけど、この大きくはない街から住人は全て消え去っていった。
とは言っても、離れた場所から一体どうなるんだと不安でこちらを住人達が様子を伺っているのは分かっている。
「…ごめんなさい。」
誰にも届かない私の謝罪は、更なる大きな炎の前に霞み消えていく。
大いなる可燃の炎が一帯を覆い、ほぼ更地と化したこの大地を見て。
住人たちが涙を流して立ち竦む。憎悪の目が私に向いているのが分かる。
「こ、国王軍だ!!!」
「お助けください!!!」
絶好のタイミングで国王軍を率いたハルが到着。
これで、私が脚本を手掛けた演劇が幕を閉じるわけですね。
「姫様、一体何を…。」
「どういうことですか!?」
何も聞かされていない国王軍もまた、この光景を俄には信じられず。
どういうことかと私を責める。
「…うるせえ。お前ら引っ込んでろ。こんな馬鹿げたことさっさと終わらせるぞ。」
狼狽える国王軍を一喝したハルは、大刀を片手に私の前に立つ。
さっさと終わらせる…というのは私に向けての言葉だったんだろうな。
こうしてハルと、正面から剣を抜くのはいつぶりだろう。
「…お手柔らかに。」
「黙ってろ。」
るうをここに連れてこなかったのは、ハルの判断かるうの意思かは知らないけど。賢明だな。
恐らく東南の軍はもう進軍を始めただろう。
国境を越えられる前に、まずは南へ急がなくては…いけない。
「南が一万。東から五万だ。」
「…了解。」
「行けるか。」
「残念ながら行けちゃうだろうね。」
剣を交えながら、小声で会話する私とハル。
周囲からは乱心した私をハルが止めているように映っていることだろう。
「…じゃあ、ぼちぼち行くね。」
「ああ。」
「出来るだけ大急ぎで復興してあげてね。」
「ああ。」
「私の代わりに謝っといてね。」
「…ああ。」
謝って、許されることじゃないだろうけど。

