パルマの街上空に到着。そこで地上の住民たちに目を向ける。
洗濯物を干していたり。
まだ朝早いのに元気な子供は駆け回っていたり。
さっそく仕事をしている人もいる。
…穏やかで、いい街だな。
「迷えば、剣は鈍る…。」
平和で、みんな楽しそうに笑っている。
でも。
迷わない。
揺るがない。
泣かない。
「…ハルの言う通りだ。」
生半可な覚悟では、この光景を滅ぼすなんてできそうにない。
気を抜けば、そんなことしたくないと逃げ出しそうになる身体。溢れ出しそうになる涙。震えそうな手。
…でも、私がやらなきゃいけない。
「自分勝手な正義で、ごめん。」
私はそっと、炎を灯す。
その炎はこの幸せ溢れる街に落とされる。
民の笑顔は忽ち恐怖へ変化する。
みんながちゃんと避難を終えるまでは、不燃の炎とそうでない炎を使い分ける。
怪我なんてさせるわけにはいかないけど、安心させてもあげられない。この力加減に胸が痛む。
「あ、あれは…姫様では…?」
「姫様の炎の魔法だっ!!!」
「何故こんなことを!?」
「逃げろ!とにかく走れ!!!」
これで、いい。
どうか早く逃げてね。元気でいてね。
誰もいないと思われる住宅、まだ開店前のお店、人通りのない道は既に火の海となり可燃の炎で燃え上がる。
恐怖の顔も、叫びも、怒りも。
全部受け止める。今は無理だけど、叶うならいつか謝りたいと思う。殴られても斬られても仕方ないと思う。
それでも今は、ただ早く。
ここを離れてほしい。
…私の涙が、溢れる前に。

