(一)この世界ごと愛したい




城門から出て飛んで行こうと考えている私は、まず城門を目指す。




「…こんな時は自分で起きんのかよ。」



後ろから呆れたような声が聞こえる。


二人して同じようなことばっかり言うんだから、嫌になっちゃうよ。




「るう、帰って来たらコーヒーよろしくねー。」


「…ハルに怒られたろ。」


「それはもう。ついさっき、るうと同じ嫌味言われたとこですー。」


「嫌味で悪かったな。」




ハルと違って、るうは特に引き留めるわけでもなく。ただ飄々といつも通り。


今までなら真っ先に止められたなー。





「ほどほどに頑張るつもりだけど、場合によっては助けに来てね。」


「…ふーん。」


「え、何?」


「んなこと初めて言われたなーと思って?」




…言われてみれば。


るうに面と向かって助けてなんて、言ったことは…なかったかもしれない。




「……。」


「言われなくても助けるけど。」


「うん?」


「俺が行くまで、持ち堪えろよ。」




もちろん頑張りますよ。


せっかく来てもらっても、手遅れだったんじゃるうに会わせる顔がない。





「ま、そんなことにならないようにしたいと思ってるけどねー。」


「無事なら何でもいい。」


「うん。じゃあ一足先に行ってくるよー。」


「ああ。」




私は再び城門を目指し、ふわりと舞い上がる。


パルマの街を目指して。




その背中を見つめるるうの目は、少し心配そうで。


でも優しくて。







「…頑張れ、リン。」




相棒としての信を置いた、強い目だった。