(一)この世界ごと愛したい





翌朝。



決意した私の目覚めは早い。


朝日がほんのり顔を出しつつある。




隣にいるハルと、不意に目が合う。




「起きなきゃいいものを。こんな時ばっか早起きしやがって。」


「…力、借りてくね。」



私はハルにぎゅっと抱きついて、ハルの力を吸収する。


もちろん、そんな気がするだけ。




「…先に行って待ってる。」


「ああ。」


「夜ご飯の時間には戻るから。」


「ああ。」




もう、引き留めようとはしないハル。


ハルはやっぱり強い。





「世界中が敵になっても、俺はリンの味方だ。」




いつかも聞いた、そんな台詞に。


思わず私の顔が緩む。



ハルとアキトは、似てるけど少し違う。少し違うけど、その根本はたぶん同じ。



そういう芯が強い人は、本当に将軍に向いていると思う。





身支度を整え。


剣を持つ。



一息吐いて、顔を上げる。胸を張る。






「行って来るね。」


「…ああ。」




今日が終われば、今ここでの私のやるべきことはもうない。後は同じことを繰り返さないよう、出来るだけ早くこの国を去らねばならない。


そう考えるとやっぱり少し寂しいけど。



とりあえず無事に帰って来たら、またハルに甘えさせてもらおう。




そんなささやかな楽しみを胸に。



私は一人で部屋を出た。