優しいね、ハル。
私はもう鳥籠の外の世界を知ってしまった。
本当は言いたくもないだろう、そんな残酷な言葉を言わせてごめん。
「…ありがとう、ハル。」
「俺は本気だ。手の届くところにさえいてくれれば、例え世界中が討ち入って来ても俺がお前を守る。」
世界中が敵なら、それは難しいよ。
火龍の力を使ったところで、無理だと思うよ。
「その世界中の敵の目を、私が惹きつけてこの国を守るんだよ。いつもの戦と大差ない。私らしい戦い方だよ。」
「戦わなくていい。力も使わなくていい。俺はお前がいるこの国なら、死んでも守ってやる。」
「…そうやって、パパは本当に死んじゃったの。」
「……。」
繰り返すわけにはいかないんだ。
自分の心を、命を犠牲にしてでも、私はもう何も失いたくはない。
「ごめんね、ハル。」
素直に言うことを聞ける妹じゃなくてごめん。
ハルの優しさを踏み躙ってごめん。
火龍の力なんて持って生まれてきてごめん。
パパを、死なせてごめん。
「謝るなって言っただろ。」
「うん。」
「…そうやってお前が泣くから、嫌なんだよ。」
「っ…。」
見られないよう、顔を背けているはずなのに。
ハルにはやっぱりバレてしまう。
「お前をこうして傷付けるから、俺はこの国をたまに憎いとも思ってる。」
「…矛盾、してるね。」
「してねえよ。俺にはリンだけが全てだ。リンが大事にしてる国だから戦うし守るだけで。いっそ滅んだ方がお前は楽になるんじゃねえかって思うこともある。」
「怖いこと言わないでよ。」

