別に誰のことも恨んではいない。
寧ろ感謝もしてる。
こうなった今、私の顔を知る人が少ないことは今後動く上で非常に助かる。
だけどこの誤算は、今私にとって大きな障害となり兼ねないと危惧しているのは事実。
「まだ数回しか外に出てない。私はまだこの国のことさえ全然知らない。だから教えてほしいの。」
「…何をだよ。」
「小さすぎず大きすぎない。人口はそんなに多すぎない。だけど他国の人も出入りするような街はどこ?」
自分で調べてもいいんだけど、時間がない。
ハルは王子としてこれまで色んな街に顔を出していたはずだし。それが二年前だとしても、私よりかは遥かに詳しいはずだ。
「…俺はお前が傷付かねえように怒ったんだが?」
「私が国を守るために出国したって思われたままじゃ、結局国を盾にされて私はまた戦いの中に身を置かなきゃいけなくなる。それを止めようとまた誰かが傷付く。」
「それでもお前さえ傷付かなきゃそれでいいって…思ってる俺は、やっぱ王座に座らなくて正解だったなあ。」
ハルは、自嘲するように笑って。
ママは、心配そうに顔を歪めている。
そんな中、るうだけは私の進むべき道を、私の正義を信じて黙って聞いてくれている。
「…街の条件、要望はまだあるか?」
そして、諦めたようにハルが私に聞く。
「この王都から離れすぎてなくて、出来れば歴史的建造物がないと嬉しい。あと、ある程度古びた寂れてる街がいいな。」
「…多いなあ。」
ハルは少し考えて。
「…パルマの街しか浮かばねえ。」
この国の地図は元々頭に入ってるし、大体の場所は分かる。
パルマは確かに王都からも近い。行ったことないけど。
「早速で悪いけど時間はかけないから。明朝頼めるかな。」
「…あーやっぱ嫌だ。なんで俺がリンを悪者にする手伝い何かしねえといけねえんだよ。」
「ごめんね。」
「俺は目覚めてから良いことなしだ。」
言われてみれば確かに。
起きてすぐにパパの訃報を知らされて。セザールへ私を迎えに来てくれて。そこから私が国を出ることになって。旅行にも置いて行かれて。
日々忙しい仕事を担っている。
「…ま、ハルなら大丈夫だよ。」
「大丈夫じゃねえよ。」
「ところでママ、私のお金って結構貯まってる?」
本気で落ち込んでいる様子のハルをスルーして、私はママに聞きたかったことを聞いてみる。
「リンのお金?」
「私財の話ね。どれくらいあるのかな…?」
「それは、確かにずっとリンに残してる分のお金はもちろんあるけど…。どうするの?」
どれくらいの金額かは分からないが、あるにはあるんだな。よかった。
「私が城を出た後パルマの街に、ハルの名前で全額寄付してほしいの。」
「全額って…。」
「街一つ復興できるだけの金額か分からないけど。足りないようならハルとるう、よろしくね。もちろん私財で。」
「「え…。」」

