(一)この世界ごと愛したい





「ん…?」


「あ、リン悪い。起こしたか?」


「……あれ、パパは?」


「墓の前で寝てたんだぞ、お前。」




ああ。そうか。



夢か現実かわからないけど。


背中を押してもらったような、叱られたような、そんな気がしたな。





「…それより、うるさいけど何?」


「ちょっとルイと話を…。(やべ、寝起き悪い方か。)」


「わざわざここで?」


「…リン、落ち着け。もう少し寝るか?」




寝かせてくれなかったのはそっちでしょう。




「寝ない。ハルに話があったから丁度いいや。」


「…後にしねえか?」


「……。」


「聞く聞く。今聞くから怒んなよ!?」



私の機嫌の悪さに臆したのか、嫌な予感がしたのか、ハルは話を聞くのを一緒躊躇った。


けど、どうやら聞いてくれるようで良かった。






「…情報操作をしよう。」


「はあ?」


「私にこの国の街を一つ破壊させてほしい。」


「……。」




ハルも、るうも。


もう何を言い出すんだと言わんばかりに驚く。




「私が一つ街を滅ぼすから、そんな私をハルが止めるっていう簡単なお芝居をしよう。」


「芝居って…。」


「もちろん怪我人は極力出さないようにする。後の負傷者の勧告は適当に改竄してほしい。街自体は、なくなってしまうけど。その私の罪を出来るだけ早く、出来るだけ広く拡散させて。」


「…感心しねえ。人を傷付けないっつっても、この国の街を壊すことだってお前には堪えるだろうが。」




そこに暮らす人々の家も、思い出も、私は全て火の海に沈めてしまおうと考えている。




分かってるよ、ハル。


身を切るような痛みを伴うだろうね。





「自作自演の安い手だけど、流言は世界を巡る。各国の貴重な情報源になり得る。だから私は、やるべきだと思う。」


「お前が背負う必要はねえ!!!」




私を怒鳴るハル。


セザールから帰ってきてからは初めてのこと。



パパに比べると怒鳴られる数は少ないけど、特段珍しいことでもない。





「東の連合軍がもういつ出陣してもおかしくない空気だけは感じ取れてる。だから正直時間がない。本当ならこのまま南をさっさと片付けたいけど、今はこっちの方がかなり問題な気がしてるの。」



「……。」



「…はぁ。シャワーでも浴びて私も少し頭を冷やしてくるから、考えといて。」