(一)この世界ごと愛したい




そんな私の言葉を聞いて、ハルはまたオーバーに落ち込んで見せる。




「大体私の石だって何回も言ってるのに。なんで勝手にハルの物になってるの?」


「……。」


「私の物を私が誰にあげたって問題ないよね?」


「……はい。」




まるで苦虫を噛み潰したような顔で、渋々納得したハル。


そんなハルに、私はようやく笑顔を向ける。




「るうから盗っちゃだめだよ?」


「…はい。」


「るうを怒ってもだめだからねー?」


「…はい。」




素直に聞き入れてくれてよかったです。


ということで、優雅なティータイムを過ごそうと思ったんですが。ハルはまた私にベッタリくっついて中々離れてはくれない。


しかしよく我慢出来たので。飴と鞭を使い分けて、ここは好きにさせてあげましょう。





「…旅行どうだった。」


「すっごく楽しかったよー。綺麗なところで、ご飯も美味しくて、色々勉強にもなった。」


「…石のことは置いといて。」


「うん?」



ハルは私を抱きしめたまま、るうをギロリと睨む。







「この痣はなんだ、ルイ。」




…あ。



例の事故で隠し続けていた痣。


かなり薄くなって来てたし、私もるうも終盤そんなこと気にする心境じゃなかったし。



注意を怠っていました。






「…あー。これは俺が悪いな。」


「るうは悪くないって。元を辿れば私が原因なんだし。」


「って言っても、ハルは納得しねえだろ。」


「そんなことないよ。ハルだって話せばきっと分かってくれる…よね?」




ハルから離れて、私はハルを見つめる。


不気味な笑顔を浮かべるハルは、るうに対してただ一言。言葉を投げた。







「…覚悟は出来てんだろうな?」




私から完全に離れたハルは、ふらりと立ち上がる。





「はぁ…。」


「ちょっと待って!」


「リン今はやめとけ。どうせこの馬鹿の頭一回冷やさねえと話何て出来ねえだろ。」


「…そうだけど。」




迷惑ばっかりかけてごめんよ、るう。