(一)この世界ごと愛したい





けど、聞き流せるものとそうじゃないものがある。


今回は後者だった。





「どうせならそんなの無理だって笑ってくれた方がよかったなー。」


「何なんだよ。」



るうが痺れを切らしたように、私に向き直る。




「俺は本当に、リンなら出来るって思ってるけど。」


「…はぁ。」



思わず溜め息が漏れるのは。


この悪意の欠片もない、真っ直ぐにそう信じてくれるるうに呆れているせいです。





「るうは馬鹿だなー。」


「あ?」


「るうが私を信じるなら、絶対に応えなきゃいけないんだよ。」




それが例え無手でも。


絶対的不利でも。



局面をひっくり返してでも覆さなきゃいけない。







「そうじゃなきゃ、私はるうと対等でいられなくなる。」




いつまでも主人であるハルの付属品。


私を絶対的に信用してくれるるうの、信用にきちんと応えないと。



その背中を任せてはもらえなくなる。





「対等どころか、どう考えても立場的にお前が上だろ。」


「私が立場的なこと云々言うと思ってるならもう少し態度は改めるべきだよー。私がるうより上だって確実に言えるのは頭の出来くらいじゃない?」


「お前馬鹿にしてるだろ。」


「してないしてない。だからさ、信用を失わないようにって私はいつも頑張るわけなんだけど。私も話すタイミング完全に間違えたね。るうがいるところで言わなきゃよかったー。」