「…どうした?」
「〜っ!」
何食わぬ顔で、ベッドで横になりながら私を見るるうに。少し腹立たしさを感じました。
なんで私だけこんな目に合うんだ!?
「リン?」
「もう寝るっ!!!」
私は部屋の電気を消して、既に横になっているるうの隣に転がり込む。
「…浴衣姿、もっとちゃんと見たかったんだけど。」
「見なくていい。」
「…なんで顔赤いわけ?」
「誰かさんが酔っ払うから、私だけが被害を受けてる。」
るうは経緯を察したようで、私の頭をぽんぽんと撫でる。
「どんまい。」
「軽っ!」
「仕方ねえだろ、済んだことだし。」
「薄情者…。」
私がるうを睨むと、るうは逆に笑う。
「俺が悪かった。」
「…もういいよ、済んだことなんだもんね。」
「浴衣、似合ってる。」
「あ…ありがとう?」
浴衣を着るのは二回目だけど。
はだけやすいのは前回で学習済だ。気を付けねば。
「……。(色っぽく見えるもんだな、浴衣って。)」
「…そんな凝視しなくても。」
「……。(隙間から見える痣がまた何とも…。)」
私をマジマジと見ていたるうが、突然ぐるりと私に背中を向けるように反転した。
「…危ねえ。」
「なにが?」
「とりあえずじっとしてろ。可愛すぎる。」
「は…はあ?」
旅行中、るうの情緒は不安定すぎる。
けど言うことを聞いておくべきだと。
私の警戒心も言っているので大人しくしていよう。
「…明後日の朝にはもうここを出なきゃいけないのかー。あっという間だねー。」
「ああ。」
「…さっきの話、あんまり本気にしないでね?」
「なんで?」
グレイブさんに話した、新たな道の話。
「あれは半分本気だけど半分は冗談。私の人生全部賭けたってたぶん不可能に近いことはわかってるし。その爪痕だけでも残せたらいいなーくらいの話だから。」
「…へー。」
「夢は大きい方が人生有意義に過ごせるからねー。」
「…無手の状況にも、勝機を作りに行くのがお前だろ。俺はお前に出来ないことはないと思ってる。」
…勘弁してほしいなー。
戦では自分の命だけじゃなくて、兵たちの命が私の両肩に乗るから。そりゃ何が何でも勝たなきゃって思ってるよ。
そして、そんな私を傍らで支えてくれるるうが私の勝利を信じて疑わないから。頑張ろうって思えるんだよ。
未だ私に背中を向けたままのるう。
その背中に、私はこつんと頭を付けた。
「るうがそう言うと、本気でやらなきゃいけなくなるからやめてよ…。」
「俺の話なんてお前に不都合なら適当に聞き流せ。」
「…確かに小言とかお説教はよく聞き流してるけどねー。」
「そこは聞けよ。」

