(一)この世界ごと愛したい





温泉とは。


こんなに素晴らしいものだったんだな。





「極楽浄土は、ここにあったのか。」



自然の中で、星空を見上げながらの入浴なんて初めての経験。露天風呂だから当然なんだろうけど。


私には、感動に値する出来事なんです。




「天国すぎるー。」



満点の星空を見上げて、私は顔が緩む。



綺麗だなー。気流で舞い上がったら一つくらい取れないかなー。


そんな無理に等しいことさえ考えてしまう。



どれくらい温泉で過ごしたのか分からないけど、段々と逆上せそうな感覚が近付いてくるので渋々上がる私。





「姫様、よろしければ浴衣を着付けましょうか?」


「あ、私また着替え持ってくるの忘れた。」



身の回りのことに関して学習能力がない私は、面目ないと思いながらも浴衣を着せてもらいました。




「あら、姫様…!」


「へ?」



女性の使用人さんが、浴衣を着せてくれる最中に突然顔を赤らめて驚く声をあげる。




「…あ。」



昨夜酔っ払ったるうが付けた痣のことを、すっかり忘れていた。



み、見られて…しまった…。




「こ、こ…これは…事故なんです!決して何もないです!」


「い、いえ!そんな!私こそ取り乱してすみません!大丈夫です!男女共に過ごせばこんなこともあります!!」


「ち…ちがっ…!本当に何もないんだって!!!」



二人で謎に顔を真っ赤に染めながら、あわあわと浴衣の着付けを終え。


私は逃げるように部屋へ戻ってきた。