部屋に残されたるうと、グレイブさん。
「ルイ様には耳が痛い話でしたか?」
「…リンのこの後の話なんて、確かに目を逸らして来たけど。でもまさか、世界を視野に入れて道を切り拓こうとしてる何て夢にも思わなかった。」
「前人未到のその道は、決して優しいものではない。きっとその身を犠牲にする茨の道でしょう。どうかあの眩き光が絶えぬよう、支えてあげてください。」
「…支えるって言っても、リンは俺を頼りはしないし。弱さも見せない。それにハルがいればリンは大丈夫だ。」
るうはそう言って、少し目を伏せる。
「私は姫様のことをまだ良く知りませんが。姫様はとても聡明、意味のないことはあまり好まない性分に見えます。」
「全くその通りだ。」
「ではその輝石をあなたに託したことが、ルイ様への答えだと私は思いますよ。」
「…答え?」
グレイブさんの言葉は、年の功もあるせいかどこか重みがある。そしてその人の本質を見抜く目は、本当に恐れ入る。
「誰よりも認め、誰よりも信を置けるルイ様に、いざという時は隣で戦ってほしいと。そんな姫様の願いを感じます。」
「…買い被りな気もするけど。そんな状況がもしあったら、頼まれなくても死んでも守る。」
「長生きはしてみるものです。姫様のあの破天荒さは、父親似でしょうなあ。」
グレイブさんがそう言って。
パパを思い出し嬉しそうに笑う。
「では、長々お邪魔して申し訳ございません。私は失礼いたしますね。」
グレイブさんが部屋を出た後、るうの頭にハルの言葉が過ぎる。
『死んでも離れたくねえのに。俺は、大空へ飛んで行った後のリンの新たな道を、見てみたいとも思ってる。』
「…その通りだな。」
るうはそう呟いて。
ベッドに転がり、輝石を見つめながら私の帰りを待っていた。

