(一)この世界ごと愛したい




部屋に取り残されたるう。




「…意味が分からん。」



私が森へ入って、少し時間は経ったけど。


その間も石を握り締めてはいるものの、石は全く何の反応も示さない。





「とりあえず、森に行くか…?」



うんともすんとも言わない石に首を傾げる。


五分は余裕で経過しているため、るうは建物から出てみることにした。




「追いかけろって言われても。」



この森は意外と広い。


私が本気で身を潜めているなら、普通に探せば日も落ちてきている現状では中々難しい。



るうはとりあえずもう一度石を握る。





「かくれんぼが始まったようですね。」


「…ああ、この森に隠れたらしい。」



先程のおじ様がるうに声を掛ける。




「石はどうですか?」


「特に変わりはないな。」


「おや、姫様はなんと説明を?」


「真面目に握ってろって。」



それを聞いたおじ様は思わず笑ってしまう。



おじ様はきっと、パパがこの石を見せた時にその使い方まで知ったんだろう。


もしかしたら試したこともあるのかもしれない。




「姫様はあなたのことを余程信頼しているんですね。」


「え?」


「その石を握ったまま、姫様のことを想ってみてください。」



るうはとりあえず言われた通りにやってみる。




刹那。


首元の石が赤い光を帯びる。





「光が…方向を示してる…?」


「その石は火龍に反応し、その居場所を伝えることが出来る石です。その光の先に、姫様はいらっしゃいますよ。」


「…なるほどな。」


「説明せずとも、あなたは常に姫様を想ってくれると…信じているんでしょうね。」




だから真面目にやれって言ったんです。


るうはおじ様にお礼を伝え、光の指し示す方へ歩みを進める。