(一)この世界ごと愛したい





「そのために俺を修行に付き合わせたんだろ。」


「お見通しすぎて嫌だなー。」


「だったら俺が行ってもなんの役にも立たねえよ。」


「…戦じゃないからね。」



今回は。


そしてこれからは。



戦ではなく単なる殺戮。





「でもるうも気を付けてね。」


「あ?」


「均衡を崩せば世界は大きく動き出す。私が城を出ればいくらかマシだとしても、それでも私との繋がりを疑う国はゼロにはならないだろうしねー。」


「ハルがいれば問題ねえだろ。」



それはそうなんだけど。


私がアレンデールの足枷になるわけにはいかないから、ちゃんと気を付けなきゃなー。




「でもあの修行の力は流石にやめた方がいい。」


「…やっぱりそう思う?」


「ああ。使い終わってぶっ倒れる力なんて、危険すぎる。側には誰もいねえの忘れんなよ?」


「私もそれは思ったんだよー。だからわざわざ罠まで仕掛けてもらうことにしたの。後は瞳の色変えなくても、通常モードで駆逐できるのではないかと考えてます!」




修行に付き合わせといて申し訳ないけど、実践で使うにはまだ少し心許ない。




私の考えを述べていると、部屋のドアがコンコンと音を鳴らす。


私がどうぞと返事をすると使用人頭のおじ様が現れた。




「ご夕食の後に温泉に行かれるとのことでしたが、夕食のお時間を少し後ろにずらしましょうか?」


「そうだねー。さっきお昼食べたとこだから、そうしてくれると嬉しいかな。」


「…おや?」




おじ様が、るうを見て動きを止めた。




「これは懐かしい。ルイ様、その石は火龍の輝石でございますね。」


「…この石のことか?」


「ええ。その石は姫様が生まれた際にその手に握って生まれて来たという、奇跡の石です。昔前国王陛下に見せていただいたのを思い出します。」




やっぱりそうか。


火龍を祀る祠があるくらいだから、何か知ってるんだろうとは思っていたけど。



この人パパのお友達か何かかな。




「おいリン、聞いてねえぞ。」


「…あーあ。城に戻るまで内緒にしようと思ってたのになー。」


「それは差し出がましいことをしました。申し訳ございません。」


「いいのいいの。丁度いいから石の力ついでに試してみようかー。」