ほっと一息。
これでまだ目的地にも着いてないんだよね。
私がまたこの旅行の幸先を案じていた時、脱衣所のドアが開かれる。
「え…。」
「もう無理。」
まだ着替えてないのに遠慮なしに入ってきたるう。
そんなるうが無理だと言って、私の唇をやや強引に奪って行く。
…情緒どうなってんの!?!?
「るっ…!」
思いっきり抵抗するも、るうは止まらない。
「ん…っ!?」
まるで野生の獣が、ただ獲物に喰らい付くように。
止まらないどころか、私の身体に巻いたタオルに手を掛けようとるうが動くのが分かる。
一体、何を考えているの。
「リン…。」
唇を離したるうが、私を呼ぶ。
呼ばれても、この状況も格好も恥ずかしいことこの上ないし、返事が出来るほど息も整っていない。
だけど、逃げないと食べられてしまう。
人間の野生的本能が私を動かす。
「っ…ごめん!!!」
私は力一杯るうを押し退け、着替えをしっかり手に握ったまま脱衣所を飛び出す。
恐らく寝室だろう部屋に逃げ込み、ラッキーなことに鍵がついていたので迷わず鍵を掛けた。
「はぁっ…。」
もう肩があがるし。顔はまだ熱いし。
さっきも思ったけどまだ初日だよね!?
目的地にも着いてないんだよね!?
「どうなってんのー…。」
私はもう、それはそれはすぐに着替えて。
自分の安全を第一に考えて。
もう、油断しない!ミスもしない!自分の身は自分で守ると心に誓います!!!
用意された綺麗にメイキングされた大きなベッドに、私は身を委ねて。
それでも、しばらくるうのことが頭から離れなくて。
さっきの感情を爆発させたようなキスも、私の名前を呼ぶ色っぽい声も。
まだ鮮明に残っているけど。
「……。」
人間横になると眠たくなる生き物で。
私はこの鍵のかかった部屋の中で、一人で眠ってしまった。

