るうは少しだけ抱きしめる力を緩めた。
「嬉しいの通り越して腹立ってきた。」
「はい?」
「俺がどんな思いで、折り合いつけたか分かってんのか?」
その声のトーンで、マジで怒ってることだけは分かります。
私だって、少しでもみんなと離れるのは寂しいし悲しいし辛いけど。みんなを危険に晒すくらいならと身を切る覚悟なんですけど。
「お前のためだと思って大人しくしてれば。」
「…大人しくはなかったけどねー。」
「ああ?」
「もう、そんなに怒らなくていいじゃん!」
せっかくの旅行なんだし楽しもうよー。
「お前この旅行中覚悟しろよ?」
「覚悟?」
「元々会えない覚悟だったし、今更嫌われることになんて俺は臆さねえからな。」
「…何か怖いんですけど。」
私に嫌われるようなことをしでかすおつもりですか?
しかもそれを先に言われると、こっちも身構えるし不安になるんですけど。
「…離して?」
「なんで?」
「なんでも。私お風呂入るねー。」
私の警戒心が、るうから離れろと言ってる。
その警戒心に従い私はるうの緩んだ腕の中からするりと脱出する。
とにかく今は近付いちゃいけない。
「リン。」
「なにー?」
「俺、休みだからな?」
「分かってるよー。」
なんだ今更。
さっき感じた身の危険は気のせいだったのかと、若干の違和感を覚える。
でももう、るうは普通な気がして。
私は何も考えずシャワーを浴びることにしました。

