「るう。」


「……。」


「…もしもーし。」


「……。」




ぼーっとしすぎにも程がある。


私もう一回街を歩いて来ようかな。



そう思って、部屋から出ようとした時に。黙っていたるうがようやく喋った。





「今更欲なんて…ないと思ってたのに。」


「なにか言ったー…っ!」



よく聞こえなかったので、私は振り返ってるうの話を聞こうと思ったけど。


…出来なかった。



るうは私を強い力で抱き締める。




「今は、じゃねえ。」


「え?」






「俺は、ずっとお前のだ。」




ずっと…。





「最後だって言ってたのに?」


「お前が離れて行くからだろ。」


「だから最後なんでしょ?」


「意味が分からん。」




こっちだって意味不明です。



でも、仕方ない。


城を出ていく以上、贅沢言える立場ではないし。





「私は帰ってきた時に、国が落ち着いてたらまたどこか遊びに行きたかったけど。るうが嫌なら別にいいよ。ハルは旅行いこうねって約束してくれたし。」


「…帰って…きた時?」


「え、帰っても来るなってこと?」




それは世知辛いことだ。


私だってたまには家族に会いたいし、実家でゆっくりしたい日もあるだろう。



まあ、誰にもバレないようにお忍びで帰らなきゃいけないけれども。




るうは思わず私を離して、私の顔を見る。





「…お前、帰って来んの?」


「……。」




もうお誕生日プレゼントあげたくない!!!




「…いいですよー。るうがいないのを見計らって帰るもん。それかるうにだけ会わないように気を付けますー。」




私が不貞腐れ始めると、るうは再びさっきよりも強く私を抱き締める。







「…よかった。」


「何が?」


「俺はもう二度と会えないもんだと…。てか、ハルの奴知ってて黙ってたな。」


「…もう二度と会えないのを、一度でも納得出来たんだね。」




それはそれで、寂しい気もする。


るうはもう二度と会えなくても良しとしたんだねー。