上から街を見下ろすと、一箇所人だかりが出来ているのが分かる。
あれはるうだ。
女の子たちに囲まれて、何やら揉めて…いや、脱出しようと頑張ってるのか。
相手が普通の女の子だと手荒なことは出来ないのが、うちの優しいるうだからね。
「私には容赦ないくせにー。」
と。
捻くれている私はその状況を傍観している。
「…あ。」
一人の女の子がるうの腕に、自分の腕を絡める。
るうは振り払うこともなく何か文句は言っているようにも見えるけれども。
誰彼構わず愛想振り撒くとか、ホイホイついていくとか言われた私より、随分仲良くしてるじゃんねー。
「はぁ…。」
るうだっていつか、私じゃない誰かを好きになって。
付き合って、結婚したりして。
幸せになる未来が来るんだろう。
それは別にいいんだ。私だってるうの幸せは嬉しいと思えるし、そう願ってる。
…それは、そうなんだけど。
私の身体は、この時計台から飛び降りた。
ごく僅かな炎だけ放出し、誰にも見られぬように人気のなさそうなところにふわりと降り立つ。
「ねえ、お兄さん!お願いっ!」
「うるせえな。人探してるって言ってんだろ、さっさと離せ。」
「少し付き合ってくれるだけでいいのっ!」
私は群がる女の子たちの間を潜り抜け、女の子の腕が絡む腕とは逆の手を掴む。

