王族でもない姫でもない、私。
ただのリンとしての、今。
そして、そんなるうも。
今は王族に仕える従者ではない。ただのるうとしてここにいる。
別に私たちの間に今更、身分の違いなんて関係ないはずなのに。それでもるうにとっては、私はどこまで行ってもアレンデールの姫。
恩人であるパパの娘。
「普通だとるうは困る?」
「…困るのはお前だろ。」
「どうして?」
「俺の歯止めが効かなくなる。」
それは、確かに…困るかもしれない。
今のこの状況でさえ、確かに困っています。
「…どう、しよう?」
「知るか。お前は難しく考えすぎだって言ってんだろ。いつも通りでいい。」
「いつも通りだとるうは楽しい?」
「お前が側にいるなら俺はそれでいい。」
いちいち甘いな…。
でも、そうか。いつも通りか。
るうのためにと気を張っていたけど、いつも通りでいいなら…簡単そうだ。
「じゃ、降ろして。」
「…ちっ。」
るうは渋々私をようやく降ろしました。
「早く着かないかなー。」
どんな街かな。
どんな人がいるのかな。
珍しい物あるかな。
「この世界のこと、もっと知りたいなー。」
「…本読んでるだろ。」
「本で読むのと実際に体験するのは違うんだよー。」
だって実際、私は知らなかった。
写真や絵で見た海が、あんなに広大で青くて綺麗なことも。足が動かなくなるほど冷たいことも。
他にも、図鑑で見た植物も。どんな香りがするのか、その香りが齎す効果も。
「実はまだ、実感ないの。」
「……。」
「…私、戦でもないのに…城の外にいるんだね。」

