(一)この世界ごと愛したい




王族でもない姫でもない、私。


ただのリンとしての、今。




そして、そんなるうも。


今は王族に仕える従者ではない。ただのるうとしてここにいる。



別に私たちの間に今更、身分の違いなんて関係ないはずなのに。それでもるうにとっては、私はどこまで行ってもアレンデールの姫。


恩人であるパパの娘。





「普通だとるうは困る?」


「…困るのはお前だろ。」


「どうして?」


「俺の歯止めが効かなくなる。」




それは、確かに…困るかもしれない。


今のこの状況でさえ、確かに困っています。





「…どう、しよう?」


「知るか。お前は難しく考えすぎだって言ってんだろ。いつも通りでいい。」


「いつも通りだとるうは楽しい?」


「お前が側にいるなら俺はそれでいい。」




いちいち甘いな…。


でも、そうか。いつも通りか。



るうのためにと気を張っていたけど、いつも通りでいいなら…簡単そうだ。





「じゃ、降ろして。」


「…ちっ。」



るうは渋々私をようやく降ろしました。




「早く着かないかなー。」




どんな街かな。


どんな人がいるのかな。


珍しい物あるかな。





「この世界のこと、もっと知りたいなー。」


「…本読んでるだろ。」


「本で読むのと実際に体験するのは違うんだよー。」




だって実際、私は知らなかった。



写真や絵で見た海が、あんなに広大で青くて綺麗なことも。足が動かなくなるほど冷たいことも。


他にも、図鑑で見た植物も。どんな香りがするのか、その香りが齎す効果も。





「実はまだ、実感ないの。」


「……。」





「…私、戦でもないのに…城の外にいるんだね。」