(一)この世界ごと愛したい





「なっ…あ。お怪我は…ありませんか。」


「ないよ。」


「…よ、よかったです。」




そこへ慌てた様子でるうが戻ってきた。


そしてここにいる第三王子を見て、るうも驚く。




「姫、お怪我は…?」


「私は大丈夫。」


「ここは随分昔に作られていて、脆い部分もある。その暴馬のような姫からあまり目を離さない方がいいよ。」




あっ、暴馬!?


この男、人が大人しく聞いてれば…!!!




「…ご忠告痛み入ります。」


「うん。」




第三王子は崩れた山の中を何やら物色し、なにかを探している。




「医務室へお供しましょうか?」


「問題ないよ。それより騎士殿は、姫に付いているべきだと思う。」




二人がなにやら険しい顔で気を使い合っている。



るうは見るからに不機嫌そうな顔だ。


どうせ後からまた勝手なことするなって怒られるんだろうな、私は。



本取りたかっただけなのにな。





「…あった。」




第三王子はようやくお目当ての本を見つけたのか、ようやく立ち上がった。