(一)この世界ごと愛したい





「ねえ、避暑地って何があるの?」



髪の毛を拭きあげてもらった私は、るうと二人ベッドに転がりつつ旅行の計画を練る。




「温泉があるらしい。飯も美味いって。」


「ここから何日で着くかな?」


「途中街に一泊して、次の日の夕方には着く。」


「街にも行けるの!?」




旅行って、一石何鳥なの!!!


すごい!!!




「今度こそお金たくさん持って行かなきゃ。」


「俺が出すからいい。」


「旅行のお金だってかかるんだし、私自分の物くらい自分で買うよー?」




私のお金どこにあるか知らないけど。


ママが持ってるのかな?





「リンの物は俺が買う。」


「…るうは変なとここだわり強いよね。」


「うるせえ。」


「この前大量に本買ってもらったばっかりだし、私なりに気を遣ったつもりなんだけど…。」


「もっと違うとこ気遣えよ。」




違うとこ?


他に気遣うとこあったかな?なんだろう?





「どうしたらいい?」


「…あんまり可愛くしないとか。」


「…それが気遣い?」


「俺にとってはな。」




そうか。


可愛くないのが気遣いになるのか!世の中まだまだ私の知らないことは多いな!




…けど、分かった。




「頑張る!」


「…ああ。(どうせ無理だな。)」


「楽しみだねー!」


「そうだな。(何したって可愛い。)」




私はるうに可愛くしないよう注意しつつ、明日の段取りを決めて。


そして次は荷物を準備しようと差し掛かった時、部屋のドアがコンコンと音を鳴らす。




この時点で、ハルではないな。