(一)この世界ごと愛したい





ハルは納得していない顔をしていますが。





「それにしても…。」



私は基盤を眺めるのが、やはり嫌いではない。


敵の策や陰謀を読み解いて掬い上げるのが得意…というか私向きと言うことが大きいんだけど。




私はさらに基盤を眺め続けて思う。


セザールに面した国境には、セザール兵の配置が見当たらないことに私は申し訳なさを感じる。



今頃大いに衰退した国力をどうにか保たんと奮闘しているだろう。アキトは大忙しだろうな。






「…ねえ、東側の配置なんだけどさ。」


「どうされましたか?」


「全体的に気持ち後ろに下げようか。」


「えっ、しかし東はより警戒しておく必要があり、後退するなど…。」




一人の軍師が私の進言を否認。そしてハルをチラッと見ている。



…いいこと思いついたのになー。




「おい。俺はリンに任せる。黙って言う通りにしてろ。」


「は、はい。姫様、どこまで後退させましょう?」




ハルに一睨みされた軍師さんは、私の話を聞いてくれるようで。





「本当に気持ち程度でいいの。ただ、下がる前に国境に罠を仕掛けよう。敵に気取られないよう地面の下に満遍なく火薬を埋めておいて。」


「え、か…火薬!?」


「即興で作った連合軍なんて上手く統率なんか出来るわけない。敵将の出鼻を思いっきり叩きましょう作戦ですー。」


「しかし地面に埋めても、仮に雨が降れば全て無に化しますが…。」




頭の回る軍師さんだね。


私この人知らないから、私がセザールに行ってる間に新しく登用された人かな?





「大丈夫。気圧も気候もかなり落ち着いてるから、しばらく雨は降らないよ。」


「そんなことまで分かるなんて…。」


「無駄に引き篭もって暇な時間過ごしてないからねー。」


「姫様がいれば、この国に軍師は必要ありませんね。」




少しだけ肩を落とす軍師さん。


私はその落ち込む肩をぽんっと叩く。




「お名前は知らないけど。いい判断力だし目の付け所も悪くない。自信持って大丈夫だよー。」


「あ、ありがとうございます。」


「ハルはね、私と違って感覚で動けるタイプの人だから。たまにめちゃくちゃな突撃しちゃうことも多いの。その時はちゃんと諭してあげて、助けてくれると嬉しいなー。」




私がそう言って微笑みかけると、軍師君は顔を真っ赤にしてコクコクと頷いてくれた。





「おい。」




ハルが軍師さんの頭をガシッと掴み。


不機嫌そうな顔をしています。私が余計なことを言ってしまいましたね。ごめんなさい。