(一)この世界ごと愛したい




午前中だけという約束だったので、私はキリのいいところで訓練終了を伝える。




「姫様、ありがとうございました。」


「こちらこそー。最後に稽古した時より、みんな随分力を付けたね。」


「もう二度と侵略されることがないよう、日々鍛錬を詰んでおります!これからも精進しますので、姫様もまた是非よろしくお願いします!」


「…そうだね。」




私は一度城内に戻り、そろそろお昼ごはんの時間だろうと広間へ向かう。


今日のランチも全員勢揃い。




「随分と兵を痛めつけたみてえだなあ。」


「痛めつけたって言い方悪いなー。」


「医務室がごった返してる。後でジジイに文句言われても知らねえからな。」


「えーハルがなんとかしてよー。」




私の訓練が気に入らなかったのか、ハルが文句を言ってくるけれど。


私は構わず食事に目を向ける。




「動いたらお腹すいたー。」


「たくさん食べてね。お昼からはアルとお稽古だものね。二人とも怪我には気を付けて?」




私がアルに怪我を負わせるなんてあり得ないけどと、苦笑いする。





「…お前左腕は大丈夫か?」



食事の途中、二刀流で稽古していた私の左腕をるうが心配してくれる。




「私の優秀な主治医の先生の薬は良く効くんですよー。」


「ああ、レンが調薬したってジジイが言ってたな。」




それにしても、今日は朝からハルの機嫌がすこぶる悪いな。


私とるうが話してるのをギロリと睨む。




「……。」


「……。」



私とるうはとりあえず黙ることにする。



機嫌が悪いのは、旅行に行けないからとママは言っていたけど。



たぶん、それだけじゃなくて。


仕事の方が大変なんだろうなと気付いた。







私の予想でも、そろそろ世界が動き出す頃。




…戦が、始まろうとしている。






「…ご馳走様!アル行こうー!」


「うん!」



私はアルと稽古場へ駆け出す。






ハル。



心配なんて何もしなくていいよ。





私が呼び寄せた敵なら、私が全部迎え撃ってあげるから。