ハルはふらふらと立ち上がる。
「こいつ自覚なくたまにやるんだぞ!?」
「痛いほど良く知ってる。」
「…やっぱりダメだ。リンと二人で旅行なんて絶対に許さん。」
「セザール行った時だってほとんど二人で寝泊まりしてたし大丈夫だ。それに俺フラれてるし。」
そう言ったるうに、憐れみの目を向けるハル。
「お前も懲りねえなあ。」
「今更感しかねえからな。」
「…お前じゃなかったら殺してでも止めてるとこだ。」
「殺すなよ。」
るうは呆れたようにハルに言う。
そしてるうも私の側まで来て、るうもまた私の頭にそっと手を置く。
「外に出たリンが男でも連れて帰って来たらどうする。俺は城のてっぺんから飛び降りる自信がある。」
「安い身投げすんな。」
「無理だって。あのリンだぞ。小さい時は俺の嫁になるって言ってくれてたリンだぞ。」
「いつの話だよ。俺はその分もう嫁に出す気分は味わっちまったからな。」
るうは溜め息をひとつ吐いて。
私に目を向ける。
「…リンがいつまでも幸せに笑って過ごせるなら、俺はそれが一番嬉しい。」
「……。」
「…何だよ。」
「お前相変わらず無欲だなあ。」
ハルはしみじみとるうに言う。
確かにハルの言う通り、るうは本当に物欲ないんだよね。自分のことに関しては特に。
「リン以外なら何でも与えてやるって言っても、お前何も浮かばねえだろ。」
「…充分なんだよ。」
今の生活が、この現状がるうにとってはそれ以上はないそうで。
両親を早くに亡くし、パパに拾われてこの城に仕え始めたるうは、これ以上望むものはないのだと言った。

