「…この国は忘れちゃいけねえ。」


「ああ。」


「身体の傷だけじゃなくて、リンの全てを傷付けて手に入れた今だ。」




ハルとるうは、とっくに覚悟を決めていた。







「リンを解放してやらねえと…な。」




それがこの国が私に出来る唯一の罪滅ぼしだと。


そんなハルの言葉に、るうも静かに頷いた。




私を誰よりも大切に思う二人だからこそ、この決断は身を切られるより辛いものだと理解している。


だからこそ、残された時間を大切にしたいと思う。





「だから旅行、行ってくるな。」


「あ、しまった!俺も行きてえんだよ!!」


「無理なんだろ。大人しく留守番してろ。」


「ふざけんな!お前旅行中にリンに何する気だ!!」




私が眠る横で、ぎゃあぎゃあと騒ぐ二人。


きっと今は私がそう簡単に起きないことを分かっているんだろう。




「…さあ?」


「さ、さあじゃねーよ!指一本触るな!リンが汚れる!!」


「よっぽどの事がない限り何もしねえよ。」


「よっぽどって?」


「…リンから迫られたらまず無理だな。」