ハルは眠り続ける私の隣で。


そっと優しく頭を撫でてくれる。




「そのことを知った親父はまた酷く怯えて、リンをさらに城に閉じ込めた。俺もそれが正解だと思った。この力が仮に世界に露見したら、それを奪わんとこの国は集中して狙われる。」


「今がまさにそうだな。」


「隠したいくせに戦場に駆り出して、矛盾してると思うか?」


「…いや、陛下の想いも何となく分かる。」




私も分かっていた。


私の力を隠したい想いが強すぎたパパは、どこまでも否定していたかったんだ。娘の私が火龍を宿して生まれたことを。



そして仮に露見することになった時、誰にも負けないほど強くなった私がこの国を守れるように。



父親からの、そんな愛の鞭だった。




「結果火龍じゃなくて戦神として名を轟かせたせいで、信仰心の強いセザールに掠め取られたわけだけどな。」


「…てかお前特訓してたんじゃねえのか?」


「リンは抜け目ねえなあ。」




ハルは図星だったようで、私を見て少し笑う。





「…ありえねえだろ、普通。」


「は?」


「戦でも負けねえ上に、火龍の力まで今や自在。単純な力だけ見れば間違いなくリンは今世界最強だ。」


「…言われてみればそうだな。」




ハルはそう言って、拳を握りしめる。


るうはその姿を見て、思わず鬼人として戦場に立つハルの姿を思い出す。





「そんな最強な奴が、まだ自分の力が足りねえって足掻いてんの見せられたら。俺もまだまだ力を付けなきゃいけねえ。」




ハルの原動力は、いつだって私。


そうやって今までも切磋琢磨してきた日々を、懐かしいと感じる。