「…ルイ。」



私の部屋へ向かう途中、るうを引き止めたハル。


ハルはるうの腕の中で眠った私をチラッと見て、心配の色を浮かべる。




「二人揃って、暑いのか寒いのか分からねえ様だな。」


「俺はどちらかと言うと暑い。リンは熱もあるし寒いかもな。」


「リン寄越せ。」


「…ったく。」




るうは素直に、ハルに私を託す。



それから二人で私の部屋に移動し、未だ眠り続ける私を見つめるハル。





「…あ?」


「どうした?」



私のびしょ濡れの服を着替えさせてくれている中で、ハルは動きを止める。





「腕の傷跡だけじゃなかったのか。」



身体中傷だらけの私を見てハルが苦い顔をする。



るうもハルの目を盗み、チラッと横目で私の身体を確認する。


ある程度は知っているはずのるうも、目に入った無数の傷跡を見て胸を痛める。




「…俺が眠ってる間、リンを酷使した結果か。」


「この二年は特に、リンの戦の腕が格段に上がった。正直陛下にも見劣りしねえくらい、リンは戦の才が開花してたからな。主要な戦にはリンが配置されることが多かった。」


「…リンは自分に火龍の力が秘められていることにずっと気付いてたんだ。」


「瞳の話はチラッと聞いたな。ハルに怒られたっつってた。」




ハルは私に新しい服を着せてベッドへ寝かせる。





「あの裏山、一回山火事になったの覚えてるか?」


「ハルとリンが山で花火して燃やしたやつか。」


「俺は咄嗟に嘘をついたが、あれは生まれて初めてリンが火龍の力を引き出した結果だ。」


「ん?リンは使えるようになったのは最近だって言ってたぞ?」


「覚えてねえんだよ。裏山で俺がリンを見つけた時には燃え盛る炎の中でリンが倒れてた。」




なるほどなと、るうは納得する。



ハルにはあの光景が頭にずっと残ったままで。とてつもない恐怖を抱えたのを思い出す。